――家へ帰っても…居場所はなかった。
莉紗さんに殴られたことを、打ち明ける気持ちにはなれなかったし。
傷のことは知らない奴とケンカしたことにして。
結局莉紗さんの話をしても、俺が心を閉ざしてるから…
言い争いになるだけだった。
自然とお互いにその話を避けるようになった。
大人な二人には、わかってもらえない――
心が荒れてて。
整理もつかない。
だから、うまく話できないし。
店にだってこんな顔じゃ出られない。
接客業だから…お客さんを不快な気分にしちゃいけないし。
何より、右手を上手く使えないことは致命的で…。
焦りも感じるー早く一人前になりたい…。
けど、俺に出来ることは毎日のように整形外科へ通って、早くこの捻挫を治すくらいで。



