ふいに、遥が波打ち際に近づいた瞬間に、俺は軽く左手で遥の背中を押した。 バランスを崩して、遥のパンプスが波に浸かる。 「やだぁ−!! もぉっ!!!」 怒りながらも、遥は笑ってる。 今一瞬だけでいい…現実逃避したい。 遥も濡れたパンプスを脱ぎ捨てた。 俺はそれから、足を極寒な海水に浸しながら、ちょっとずつ深い方へと歩き始めた。 ゴツゴツした石と貝・砂の感触・海水の冷たさ。 潮風の香り。 全部忘れたくない。