私はつんっと頬を突いてみた。



少し顔をしかめただけで、起きる気配はない。



「たーくとー?」



囁いてみても、起きる気配はない。



「えいっ。」



つんっとわき腹を突くと、飛び上がるようにして起き上がった。



寝起きとは思えない瞬発力。



「なんだ!?」


「おはよ。」



チッという舌打ちが答える。



拓都は膝立ちのまま頭をわしゃわしゃと掻きまわした。



「なんだ、嗄雪かよ。
母さんかと思った。」


「…今だに公子さんこんなことやってんだ。」


「想像にかたくねぇだろ?」



嘆かわしげに、拓都は言う。



うん、ご愁傷様。



「で、なんでいんの?」


「今日が約束の日だったでしょ?」


「あぁ、そうか。
で、メシ?」



まだ、と首を振る。



「下で仕上げしてるらしいから、上がってきた。」


「そう。」



退いて、降りるから。と拓都は私を押しのける。



小柄な拓都は、立つと私と変わらない。



大きなぎょろっとした目が私を見た。



「久し振りだな。」


「うん。
っていうか、毎日会ってんのに拓都が話してくれないんじゃない。」



ここらで抗議してみる。



本当に。



休み時間や移動教室、掃除やらで毎日必ず顔を合わすのに、拓都はまるで他人みたいに私を無視する。