【短編】Christmas Present

何!?



振り返らずとも声の主はわかっていたけど、反射で振り返ってしまう。



予想通り、額に青筋を浮かび上がらせた拓都が車椅子でこっちに向かってきているところだった。



「待てって言ったのに!
お前、俺がここまで来んのどんだけ大変かわかってんのかよ!」


「拓都、動いていいの!?」



言う事それかよこんちきしょう!



拓都は周りを憚らずに、大声を上げた。



そろそろ居合わせた人達のフリーズもとけたところだったのに、また注目を集める。



「ちょっと前から動けるようになったんだよ。」



言いながら、カラカラと車椅子を力任せに動かす。



「っきしょう、話したこともねー奴らの手ぇ借りて、ここまで来たんだ。
黙って怒鳴られてろ。」



座れ、と顎をしゃくられる。



「やだよ、エレベーターきたもん。」



ここでようやく落ち着いた私が抗議するも、拓都は力一杯私を引く。



車椅子なのに、なんて力。



これだからスポーツやってから喧嘩できなくなったんだよ。



引っ張られていく私の後ろで、チンと虚しい音を立てて、エレベーターが閉まった。



「もう、行っちゃったじゃん。」



せっかく待ったのに。



「だから、黙ってろっつてんだろ。」


「やだよ。
さっきの彼女はどうしたの?」


「彼女じゃねーよ。」



あ、いや、そういう彼女のつもりじゃなかったんだけど。



もうこの際どっちでもいい。



「帰ったの?
待ってるの?」



なおも問い詰める私を鬱陶しそうに見やり、拓都は行った。



「帰れって言っといた。」



こっち来てないじゃん。



ってことは、まだ病室にいるってこと。



…実質放置してきたんだ、拓都。



せっかく見舞いに来てくれた人を放置してまで説教してもらわなくていいんだけど。