「やっだー、拓都。」



明らかに、女の声。



そして、その声には聞き覚えがある。



頭の中で、その声の持ち主が思い起こされた。



私はぜんまい仕掛けの人形のように、ゆっくりとカーテンの閉まっていない拓都のベッドを振り向く。



「……お客さん、来てるみたい。」



彼の気遣わしげな声が、鼓膜を揺らす。



拓都は彼女に手渡されたプレゼントに目を落としていて、気付かない。



しかし、彼女は顔を上げた。



驚いたように口を開ける。



「あ、あなた…どうしてここに…!?」



その声に気付いた拓都が、同じように顔を上げる。



そして、眉間にしわを寄せた。



「嗄雪…!」


「あ~、ゴメン、帰る。」



お邪魔しました~、と言った私の声は、自分でも驚くほど落ち着いていた。



「あっ、おい、待てよさゆ!」



いやいや、待ったら彼女が気を悪くするから。



顔を見て、完全に思い出した。



いつも、拓都と一緒にいる女の子だ。



きっと、拓都のクラスメイト。



彼女に変な誤解をされるといけないので、少し他人行儀に頭を下げる。



私に警告してくれた彼は、困ったように微笑んだままだった。