「ねぇ、そろそろベッドの外に出たら?」



長い沈黙の後、私はそう提案してみた。



しかし、それは黙殺される。



顔色をかえず、拓都は手元の箱に視線を落としたままだ。



拓都の得意技。



聞かないふり。



いつもはこれで無言の抗議を汲みとり、諦めるのだが、今日は食い下がった。



大事な時期に怪我をして、暗い気分なのはわかるが一日中独りでいるのは身体にも精神にもよくない。



「聞いてるの?
みんな歳近そうだし。」


「っるっせー。」



低い声。



みるみる不機嫌な顔になっていく。



「嗄雪には関係ないだろ。
いちいち口出すなよ。」


「そうさせてるのは誰?
私以外に話してる人いるの?
不健康だよ。」


「だから、うるせーって。
お前、俺のなんなんだよ、そんなこと言われる筋合いねーだろ。」



少し、胸を抉られた。



どうせ、私は拓都のただの幼馴染。



それも、学校では口も利かない仲の。



でも、心配するのは勝手でしょ。



「あのね、筋合いならあるのよ。
一人で不幸面してないでよ、鬱陶しい。」



この言葉に拓都はとうとう声を怒らせた。



「お前…!
だったら来なきゃいいだろ、なんで来んだよ。」


「公子さんに頼まれてるからよ。
自分が行けばまた拓都が怒るからって。
親心配させて、気をつかわせて、よく大きな口叩けるわね。」