親の顔の広さには感謝する。



私の母親は驚くくらい社交的で、毎日やれ誰とランチだの、誰とお泊まり会だの、毎日飛び回っている。



父親が会社のお偉いさんだから出来ることだ。



まったく、私と正反対な人である。



私の想い人…拓都の母親も同じような男に嫁ぎ、同じような生活を送っている。



呑気なママさんライフを過ごしている者同士、気が合うらしく、付き合いは続いている。



もし、そういったことがなければ、きっと彼はただの憧れとして話すこともなかっただろう。



実際、学校では一言も話さないし。



話してくれない、と言ったほうが正しい。



何でも消極的な私とは違い、彼はみんなの中心的な存在だ。



決してノリがいいわけではないのに、なぜかいつも人に囲まれている。



勿論、女の子も多数。



私が話しかける隙なんてあったもんじゃない。



ということで、私の微妙な片思いは続行中だ。



何度も他の男子と話して知り合ってみようと思うのだが、絶妙なタイミングで拓都達と食事に行く計画がなされ、そのわずかな間の会話で私の決心は崩れさるのだ。



こんな疲れるものを恋を呼ばせるなんて、神様を案外残酷だ。



そして、今、話せていない期間がそろそろ長くなってきて、私の寂しさメーターが急上昇。



しかし、ついこの間、拓都の家で食事することが決まった。



私はまたもやその甘い餌につられ、今も惨めに彼を眺めているのだった。