「拓都、来たよ。」


「おう。」



ざわめきで私が来たとわかったらしい。



私が閉めきられたカーテンの中に入ったときには、拓都は既に漫画を手放していた。



「今日もお菓子買ってきた。
拓都、これ好きでしょ?」



言って、さっき買ったチョコを出す。



それは某有名お菓子会社のちょっとお高いチョコだった。



拓都の好物だと聞いた女の子達が毎年決まってバレンタインに手渡すもの。



…最初にそれを発見したのは私だったのにな。



「サンキュ。」



拓都は少しだけ、微笑みを浮かべる。



もう食べる?と訊くと即決で頷いた。



私は親切にも箱を開けてやる。



「もうすぐクリスマスだねぇ。」


「ああ。
なんだよ、嗄雪。
男でも出来たのか?」



少し嘲笑うかのような声色。



私は黙って目をそらした。



どうしてそんなこと言うの。



ネコ目が、私を見ているのがわかる。



私は敢えてそれに気付かないふりをした。



拓都は不満そうな気配を醸し出し、チョコを一口に放り込む。



私は黙って箱の中から一つ、口に入れた。



うん、さすが。



口の中でとろけるようだ。