私はその背中を見送ってから、まだ沈黙している同室者に一礼してカーテンを閉めた。



何も言わず、椅子に座る。



拓都は相変わらず、こっちを見ない。



壁を睨んでいる目は、少し濡れていた。



「痛いの?」



私は頃合いをみて、ズッと椅子を引きずって、近寄る。



拓都はちらりと私を見て、素っ気なく頷いた。



「そっか。」



硬いギプスの上に、指をおく。



それは完全に拓都の脚の形を隠していた。



「大変だったね。」



事故の詳細は聞いていないけど、これほどの怪我お負うくらいだから…。



怖くて考えたくない。



「でも、言ったら怒るかもだけど、ホントに頭打ってたらもっと大惨事だったね。
私、包帯で顔が見えないくらいかと思ってぞっとした。」


「そんな映画みたいなことあるわけないだろ。」



やっと、拓都が口を開いた。



よかった、話してくれた。