また、病室が水を打ったような静けさにのまれる。
「拓都…。」
驚いている公子さんを睨み付け、拓都は唇の隙間から押し出すような低い声を紡ぐ。
「よくそんな無神経なことが俺の前で言えんな。
脚、折ったんだぞ、俺。」
拓都が言わんとしていることが、わかった。
私は気まずくて膝に置いた手に視線を落とす。
ギプスでがっちりと固定され、さらにそれを器具で安定するよう吊られている。
怪我の重さが窺えた。
きっと、しばらく入院、そしてリハビリをしなくてはならないだろう。
拓都は、しばらく陸上から嫌でも離れなくてはならない。
彼は身体がなまって置いていかれるのを恐れている。
しかし、公子さんはフォローのつもりで地雷を踏んだ。
「で、でもね、拓都。
脚折った程度で済んでよかったじゃな…。」
「脚折った程度ってなんだよ!
俺が一番怪我したくない箇所だろ!
なんで脚でよかったとか言えんだ!」
同じ病室の、同い年頃の少年達が恐る恐るこちらを窺っている。
私はすっと立ち上がった。
椅子がガタンと音を立てる。
拓都は泣きそうな顔で私を見上げた。
私は咄嗟に目をそらす。
きっと、拓都は今自分の顔がどんなかわかってない。
泣くのはプライドの高い拓都には不本意なことで、きっとそれを人に見られるのも不本意なはずだ。
しかも、私なんかに。
「拓都…。」
驚いている公子さんを睨み付け、拓都は唇の隙間から押し出すような低い声を紡ぐ。
「よくそんな無神経なことが俺の前で言えんな。
脚、折ったんだぞ、俺。」
拓都が言わんとしていることが、わかった。
私は気まずくて膝に置いた手に視線を落とす。
ギプスでがっちりと固定され、さらにそれを器具で安定するよう吊られている。
怪我の重さが窺えた。
きっと、しばらく入院、そしてリハビリをしなくてはならないだろう。
拓都は、しばらく陸上から嫌でも離れなくてはならない。
彼は身体がなまって置いていかれるのを恐れている。
しかし、公子さんはフォローのつもりで地雷を踏んだ。
「で、でもね、拓都。
脚折った程度で済んでよかったじゃな…。」
「脚折った程度ってなんだよ!
俺が一番怪我したくない箇所だろ!
なんで脚でよかったとか言えんだ!」
同じ病室の、同い年頃の少年達が恐る恐るこちらを窺っている。
私はすっと立ち上がった。
椅子がガタンと音を立てる。
拓都は泣きそうな顔で私を見上げた。
私は咄嗟に目をそらす。
きっと、拓都は今自分の顔がどんなかわかってない。
泣くのはプライドの高い拓都には不本意なことで、きっとそれを人に見られるのも不本意なはずだ。
しかも、私なんかに。


