「ったく…。いつまで怒ってるんだよ。もう五日だぞ」
「あたしじゃなくて陽呂が怒ってるんじゃんっ」
「そもそも柚希が俺の大事にしてたDVDを割るからだろ!?」
「ケースだけで本体は無事だったでしょ!弁償するって言ってるのにあたしのこと"デブだから"って言った陽呂が悪いんだよっ!!」
…本当、小さなことで喧嘩するのね。
溜め息をついてギャーギャー言い合う二人を呆れながら見て、ふと思った。
些細なことでも、面と向かって素直に言い合えることが、羨ましい。
私は祐輔に対して怒ったことがないから。
怒る依然に喧嘩すらしたこともないか。
そうなるのが何処か怖くて、逃げてばかりの私だったんだから。
現在進行形でも、ね。
私は、弱い人間だ。
「だーかーらー。何度言えばわかんの?ホントに"デブ"なんて思ってる訳ないだろ」
「ふん、どうだか」
「…………愛情表現だっつの…」
「………………。」
「何とか言えや、こら」
あ…。
柚が女の子の顔になった。

