「え……?」

 奈津美は驚いて、旬の方に振り返った。


 そこには、きちんと正座して奈津美の方を向いている旬の姿があった。

 旬は、真剣な顔で口を開いた。


「俺……本当、今までナツのことちゃんと考えてなかったっていうか…いや、ナツのことは本当に大好きだし、すっげー大事に思ってるよ! …でも、知らないうちにナツに甘えてたのは、確かだと思う…。ナツがどう思うかとかは、やっぱり考えられてなかった……」

 そこまで言って、旬は俯いた。


「これじゃあ、俺、ナツの彼氏って言えないよな…」

 そう呟くと、顔を上げて再び真剣に奈津美を見つめた。


「でも、これからは気を付けるから……だから…別れるとか、考えないでほしいんだ! 俺は、ナツが一番大切だから…ナツがいないとダメなんだ!」


「旬……違うの!」

 奈津美は慌てて声にした。


「旬は全然悪くないの! あの時は…あたしが勝手にイライラして……それで旬に当たるみたいになっちゃって……どうかしてたの。連絡も……何だか気まずくてできなくて……だから、旬のことを悪く思ったわけじゃないの!」


 奈津美が一気に話した様子を見て、旬はきょとんとしていた。


「……じゃあ、別れようとか、思ってない?」

 旬は、神妙に尋ねた。


「うん」

 奈津美は、すぐに頷く。


「じゃあ、これで仲直り?」


「うん」

 奈津美はまた頷く。すると、旬の顔が綻んだ。


「よかった……」

 その一言に、本当に安心しきったような、まさに胸を撫で下ろしたという、そんな気持ちが込もっていた。