奈津美は何とかいつも通りの時間に出社し、ロッカールームに入ることができた。


「おはよう、奈津美」

 先に来ていた同僚のカオルが制服の身だしなみを整えながら奈津美に声をかけた。


「おはよう」

 奈津美も挨拶し返して、カオルの向かいの自分のロッカーの鍵を開けた。


「あれ? 奈津美、昨日と服一緒じゃない?」

 カオルに言われ、奈津美はぎくりとする。


「あ、また例の年下の彼氏君の家にお泊り?」

 カオルがにんまりと笑って言った。


 どうして女の勘というのはこうも鋭いのだろう。同じ女でありながら奈津美は思う。だが、奈津美の場合、これが初めてではないというのがあってばれたのかもしれない。


「平日からよくやるわねぇ」

 明らかに面白がっている様子でカオルは言った。


「ま、仕事に支障が出ない程度にね」

 そう言ってカオルは先にロッカールームを出て行った。


 奈津美も急いで着がえようとロッカーの中にかけてある制服をとる。


 女性社員は制服が義務づけられていて、普段は面倒にも思うのだが、こういう諸事情で二日連続同じ服の時は、ありがたく思う。私服やスーツの場合、まさか男の家から直行という理由で、二日連続で同じものを着るわけにもいくまい。


 制服を着て、奈津美はロッカーの戸の裏についている鏡を見ると、口紅が少しはげていた。


 それを見ると、さっきまでのことを思い出させた。