奈津美は、ゆっくりと携帯を操作し、メールの問い合わせをする。

 電波状況が悪いせいで『接続中』という文字が長い時間点滅している。


 もしも、旬と別れたら……


 奈津美はそれを想像してみる。


 もしも、旬と別れたら、もう旬とは、連絡をとることはないだろう。それは分かる。


 このままの別れ方だと、別れてからも友達としてなんて、付き合える自信がない。


 旬からの電話もメールも、もうなくなると考えたら……例えば今の、問い合わせているメールが、旬から一通もきていなかったら……


 奈津美の頭が真っ白になる。足も、無意識に止まった。


 嫌だ――


 この時奈津美は初めて気付いた。自分の中の、旬の割合の大きさに――



 バイブがなった。

 メールが来ていることを知らせている。


 受信メールは四件……

 奈津美は受信ボックスを開いた。


 沖田旬の名前が4つ、並んでいた。それを見て、奈津美は、泣き出しそうなぐらいに安心した。


 そして、それを順番に開いていった。


 今日の一件目は朝九時過ぎ。内容は、昨日までと同じような、ごめん、というもの……


 二件目を、開いて、奈津美は目を見張った。

 今までと少し違い、今までで一番短かった。


『ナツに会いたいよ』


 たったそれだけの一文……

 たったそれだけでも、旬が伝えたいことは充分に分かるものだった。


 奈津美は本当に泣きそうになるのを必死に堪えて、次のメールを開いた。

 次のメールは、午後五時半過ぎ……丁度、奈津美が遅めに仕事を終えていた頃だ。


『今からナツの家に行くよ』


 奈津美は目を丸くして今の時間を見た。午後九時四十七分……もう四時間以上経っている。


 どうしよう……

 何でこんな時に、電源を切ってしまっていたのだろう……

 奈津美は今更になって後悔した。


 そして、あと一件……七時前に来ていたメールを開くと――

 奈津美は携帯を握りしめ、走り出した。