「だいたいさ、旬だって流石に嫌気さしたと思うんだよね。勝手にキレて、いつも以上にあんな口汚くなって、言うだけ言って後は無視。あたしだったら、こんな女嫌だもん。このまま付き合っても、お互いストレス溜りそうだし……そろそろ別れ時かなーって」

 軽く笑い飛ばして、奈津美は言った。しかしそれは、単なる空元気のように虚しく聞こえる。

「いいの?」

 カオルは、静かに口を開いた。


「奈津美は、本当にそれでいいの?」


 あまりの真剣さに……いや、多分それは関係なく、奈津美は固まってしまった。自分でも何故か分からない。

 大きなことを言っておきながら、いざ面と向かって確認されたら、口が動かなかった。『うん』と頷くことだけもできなかった。


 見兼ねたカオルは小さくため息をついた。


「あたしは奈津美と彼氏君は、すごくお似合いなんだと思ってた。奈津美、いつも何だかんだ文句言いながら楽しそうだもん。彼氏君の話してる時」


「え?」

 カオルのいうことの意図が掴めず、奈津美は更に言葉を引っ込める。


「それに、奈津美の話の彼氏君も、奈津美のことがとにかく好きなんだなあって……あたしはそう思ったけど?」


「ウソ……どこが?」

 奈津美は、少し驚いた。今まで、カオルに話したことは、旬の愚痴というか、どちらかと言えば陰口っぽい(そこまでひどくはないが)。それのどこに旬の気持ちが分かる要素があったというのか……


「奈津美が楽しそうだから。奈津美、前の彼氏と付き合ってた時はそんなに楽しそうに話してたことないし」

 カオルは、簡潔に同じことを言って応え、更に続けた。