「でも、それは自分がただぶつけるだけじゃなくて、相手の言うこともちゃんと受けとめて初めて成立するの。それで、自分の通したい所は通す、逆に相手の意見を尊重して妥協するところはする。……そんな感じよ」


 まるで解説者のようなカオルの言葉を、奈津美はただ黙って聞いた。そしてカオルは、更に続ける。


「男女だからっていう前に、そういうのって人間関係として必要なものじゃない?単純に、人と付き合うんだから、他人に受け入れてもらうことも他人を受け入れることも」


 なるほど、と奈津美は思う。とても説得力がある。


「…でも、どうしても受け入れられなくて、受け入れてもらえないって場合もあるだろうし……その時は本当に合わないってことでしょ。だから奈津美」

 カオルの視線がいきなり奈津美に向き、何となくぎくりとした。


「彼氏君とちゃんと話して、彼氏君が奈津美にとってそういう相手なのか、ちゃんと見極めてみたら?もしそれで別れることになるんなら、彼はそれまでの相手だったってことでしょ」


 本当に、カオルの言うことには説得力がある。


 今までの彼氏がいい例だ。些細な言い争いから、お互いの本心を知り、相手はその奈津美を受け入れてくれなかったわけで、奈津美もまた、相手を受け入れようとしていなかった。

 要はそれが『そこまでの関係』だったということだ。


 奈津美と旬も、そうなってしまうのだろうか……それは誰にも分からない。