と、思わず出てきてしまって、ちょっとこの行動はやりすぎだろうかと、奈津美は思った。でも、連絡が取れないわけだし、バイト先かそこから来るまでに何かあったのかもしれない。


 それで迎えに行くのは自然なことだ。……と思う。

 一応、奈津美はメールを送っておくことにした。


『まだバイト?何かあった?
今から迎えに行くからね』


 さっき電話して繋がらなかったけれど、念のためだ。


 何か理由があって連絡できなかったのならしょうがない。ただ、何もないなら早く安心したかった。




 もしかしたら、途中で旬に会うかもしれないと思ったが会うこともなく、奈津美は旬のバイト先のカフェの前まで来てしまった。道中も別に何かあったという様子もなかった。


 ふと見てみると、店の看板の入り口に


本日バレンタイン割引
カップルのお客様・二人で200円引きです


という看板があった。中を覗いてみると、カップルの客がたくさんだった。


 この店は、地元ではケーキが評判で若者の客が多い。そんな店がこんな割引セールをやっているのなら、客も普段より多くなるだろう。



 それで遅くなったのかな?と奈津美は考える。それなら多目に見てやろうと思いながら、奈津美は店の中に旬の姿を探してみた。

 しかし、忙しく動いている店員の中には、旬の姿はない。


 丁度上がったとこなのだろうか。

 奈津美は、もう一度電話してみようかと、コートのポケットの中の携帯を取り出した。


 その時だった。

 店の脇道から、見覚えのある姿が出てきた。


 旬だ。きっと従業員用出入口から出てきたのだろう。


「しゅ……」

 奈津美は、呼ぼうとして途中で固まった。


 旬はその場に立ち止まって後ろに振り返った。そして、旬が出てきた所から、旬を追い掛けるようにして誰かが出てきた。可愛らしい風貌の女の子だった。

 二人は、仲良さげに話し始めた。