「つうか、あいつ働く気ないんじゃねえの?」


 その言葉に反応して、奈津美は見えないと分かっているのに、顔ごと隣を向く。


「彼女がOLってことはそれなりに稼いでるんだろ? しかも料理も掃除も洗濯もできるってことは身の回りのことは全部してくれるわけで、最悪何もしなくても食っていけるじゃん」

「あー。確かに。まさかあいつそれで付き合ってんのか?」

「だとしたら最悪だな」


 三人とも冗談ぽく軽い言い方で、笑い飛ばしていた。


 そのあとの三人の会話は、奈津美には聞こえていなかった。



「――奈津美」


「えっ……」

 カオルに声をかけられ、奈津美は我に返った。


「顔、死んでる」


「え……」

 箸で奈津美のことを指され、奈津美は半ば無意識に頬に手をあてた。


「気にしちゃだめよ。本気で言ってることじゃないんだし、まして本当のことじゃないんだから」

 カオルが、はっきりと奈津美に言い聞かせるように言った。


「……うん」

 奈津美は、小さく頷いた。