「それで、何作んの?」


「チョコレートケーキ。旬、ケーキ好きだから」

 カオルに聞かれて、奈津美はそう答えた。


「ケーキって……ホールで?」

 カオルは、まさか、という顔をする。


「うん。旬ってケーキ好きっていうか、甘いものが大好きなの。旬の誕生日も、ケーキ食べたいっていうから作ったんだけどね、流石にホールでは作りすぎたかなあって思ったら、殆ど一人で完食しちゃったの」


「一人で?」

 カオルは目を丸くしている。


「そう。しかもそれで平気だし。もう、見てる方が気分悪くなったわよ。……ケーキバイキングとか行く時、誰よりも目が輝いてるし。ちょっと恥ずかしいくらい」

 その時のことを思い出して、奈津美はため息混じりに言った。


「へー…ケーキバイキングとか行くの」

 カオルは何故かそっちの方に食い付いた。


「まぁ、たまにね。旬が行きたがるから」


「いいなぁ。あたしもそういうデートしてみたい」

 カオルは、本当に羨ましそうに言う。


「え、何で?」

 奈津美にはカオルの気持ちが分からず、聞き返す。


「だって楽しそう。そういう所ってさ、一緒に入っていい男と良くない男いるじゃない」


 まあ確かに、と奈津美は思った。

 ただでさえそういう店は女性客が多いわけだし、奈津美達のようにカップルもいるにはいるが、正直、男は浮く。カオルの彼氏は明らかにそうだろう。というか、そもそもケーキバイキングとか、そういうものが似合わないような、大人だ。


「でも旬と行くのは、あんまりお金ないからだもん。カオル、贅沢だよ」

 確かに旬は、男のくせにそういう店に溶け込んでいるが、それが彼氏としていいのかは別だ。


「奈津美だって贅沢でしょ。ていうか、何だかんだで彼氏君の話ばっかしてるし」


「そっそんなことないし!」

 カオルに指摘され、奈津美は顔を真っ赤にしてしまった。