明里さんは時々嗚咽を洩らしながら文を読み、読み終わると俺たちの方を向いていった



「敬助さんの死は無駄な死でしたか?」

「いいや、少なくとも俺にとってはとても意味のあるものだった」

「そうですか…」



そう言うと再び文に目をおとした



「ならば、敬助さんに負けないくらい私の人生を意味のあるものにしたいです」

「……」

「そうしたら私が死んだとききっと笑って私を迎えてくれるから」




文から目を離し俺たちに向けた顔は先ほど絶望に染まっていたときのとは違い



固い覚悟を決めた優しい顔をしていた




この顔が空に昇っちまった山南さんにも見えているといい




あんたの死を決して無駄になんてしねぇから



雨がやんで雲の切れ間から陽が差し込む




あんたの声が聞こえてきそうだよ、山南さん



『笑って、明里』