「何で逃げんの?」
「や、逃げてなんかないけどっ!?」
あ、声裏返った。
こんなの…そうです、って言ってるようなもん。
「いや、あの、これは……ひゃっ?!」
急に引き寄せられた体。
遥の腕があたしを強く抱き締める。
「い、いきなり何すん…っ」
「…聞こえる?」
「え…?」
…あ。
この音、遥の…?
「遥、ドキドキしてる…?」
小さく頷いた。
あたしだけじゃ、ないんだ。
「遥、余裕だったから…あたし恥ずかしくて…」
「余裕?そんなのあるわけないじゃん。ずっと…俺だけドキドキしてんじゃねーかってくらいで…。」
少し拗ね気味に呟く遥がなんだか可愛く思えた。
「悪かったな、ガキで」
おさまらない胸の音。
伝わってくる胸の音。
ふたつ重なって…ひとつになる。


