彼女には言えない。





すると、隣から髪のくじゃっとした音が聞こえて竜希のほうを見る。




「なんつーか、本当。飽きねぇっつーか…卒業したくねぇな」




寂しさを隠しきれていないような笑顔。



この顔、見るのは2度目だった。



竜希の大学入試の前に放課後勉強してた時も同じようなこと言ってたな。



その時、俺は…
なんて言ってやったんだっけ。




「楽しかったからそう思えるんだろ」




確か、こんな言葉を口にした気がする。




すると、竜希は
ぐちゃぐちゃになった髪を軽く整えた後に




「今のセリフ。自分にも言ってやれ」




そう言われた。


意味が分からず
「は?」と聞き返すと、




竜希は呆れたように
ため息をつき言った。




「誰よりも"卒業したくねぇ"って顔してんぞ」