―― それから三十分
「 さ! お二人ともどうぞ!
お野菜たっぷりですからね 」
「 …でも リルカちゃんが 」
「 ほっとけ
あいつは何十分、
トイレに篭城してるつもりだ?
…この前みたいに、
外に飛び出して行くんだろうと
思ってたのに 」
鍋に手を出そうとしないアキラに代わって
藤本が小皿を並べ、鍋奉行する
「 …あれは実に
阿部先生に追って来て欲しかったからで…
今回の場合
―― 帰ってしまったらヤバイからですよ
阿部先生が追って来ずとも
また、この前みたいに僕が追って
…そしたらこの部屋には
ユウジとアキラの二人きり…でしょ? 」
「 コドモがそこまで考えるか? 」
「 リルカちゃんて、いくつ? 」
「 …17歳だっけ? 」
「 ―― 5歳しか、変わらないよ? 」
「 …5歳もだろ 」
「 私が
ユウジ好きになったのも、17歳の時 」
別れた時から一年
すぐにこいつと判らなかったのは
この黒く長い髪と、勤め先の制服
付き合ってた時のアキラは本当に
いつでも、身につけているのは
流行りの物で
こんな透明な爪の表面なんて、
見た事もなかった
メシ時に除光液を使いまくって
それでケンカをした事もある ――
青戸が同じ部屋にいるせいか
かなり額のシールがはっきり見えて
アキラのシールは、白い丸の真ん中に
茶碗と同じ、ウサギの絵がついていた


