「 何でシールが'光 "なのに
羽根、…そんなに真っ黒なんだ… 」
―― 誰にも見えていないのか
駅に急ぐ人々
その拡がる
見事に出来上がった黒い翼に
誰も気が付かない
「 その見えるままの、意味でしょうね 」
藤本は、ニコリと笑う
「 …答えになってねえ 」
「 あ、
でも ここまで見えるって事は
近くに青戸さんがきっといるんじゃ…
――― いたいた!!
青戸さ〜ん!! 」
びっくりして振り向く
駅構内の書店に向かい
陽気に手を振る藤本
言う通り、店頭に青戸は居て、
見つかって驚いた拍子に
平積みされた本を
ものの見事に崩してしまった
「 … なにやってるんだか… 」
ベンチから立ち上がり、走って
急いで中から出て来た店員に、
藤本と一緒に頭を下げた
青戸自身も
一部、水溜まりに落ちてしまったり
アスファルトに起こった盛大な雪崩を
必死になって、両手で拾う
「 ごっ ごめんなさいっ!! 」
「 …いいから離れてなさい、青戸 」
「 でっ でもっ!!
私…ちゃんと買い取りますから! 」
「 ――― 買った後どうするんだ? 」
「 読むに決まってるでしょ?!
私、本は何でも… 」
「 "ミンナに内緒☆声の出ちゃう恋♪"
"キケンなマイダーリン"
"知りたいの☆しあわせなH"」
藤本が、煽り文句を音読しながら
しゃがんだまま何冊か取って
表紙を向け、青戸に見せる
内容を理解して
気張っていた青戸の表情が
一気に崩れ、真っ赤に染まった
… 遥か上空で、
何か爆発したような音がしたが気にしない
「 …っ これくらいフツーに読 ! 」
慌てて俺達から本を奪い取り
青戸が勢いよく立ち上がった拍子に
ドカンと一発
かなり痛そうな、激突音がした


