「 大事なことを、
おまえはひとつ、忘れている
… そのスイートホームに
一体、誰と誰が住むんだ? 」
「 え、
もちろん、僕と阿部先生ですよ? 」
「 …冗談は羽根だけにしてくれ 」
「 む
…忘れてらっしゃるのか
ご存知ないのか判りませんが
僕、 " 男性 "ではないですからね? 」
「 " 天使 "だろ
…それくらいは、俺も知ってる 」
「 じゃあいいじゃないですか
あえて言えば、今先生だって
僕に近い存在なんですし…
… それに…
先生 最近、たま〜に僕の事
" コイツが女だったらなぁ "って
少し…思ってたりしてませんか…? 」
「 … 思ってない 」
「 …ホントに? 」
「 ―― ぜ、絶対、そんな事、
俺は 思ってねえんだからな!! 」
藤本はクスクスと笑い
風に髪を なびかせる
「 …貴方が好きですよ 阿部先生 」
ハンドルを握り
そこに額をあてながら
少しもふざけた調子の無い、静かな声
少しすると
切なそうな視線は、前を向いた


