藤本の目が、微かに光って
ストールの重さが、
少し増したような気がした
「 …ありがとう 」
藤本が微笑む
「 え… 藤本先生まで
どこか行っちゃうんですか?! 」
「 いえいえリルカさん
藤本先生が向こうに行くのに
少し、お付き合いするので
――― それでは
学園を出ましょうか 阿部センセ 」
「 わかった 」
「 ―― 阿部先生!!
向こうに着いたら、住所教えてね!!
メ、メアド消してないよね?! 」
「 ああ、…残ってるぞ
―――― それじゃリルカ!!
ちゃんとメシ食って、
友達やお母さんと仲良くして、
破滅的な数学、ちょっとだけ頑張れ
後は いい
おまえは、良い子だから 」
「 …… 先生ぃ 」
「 じゃあな 」
涙を溜めるリルカの後ろで
イチルが脚を交差し、腕を胸に充て
バレリーナか、貴族の挨拶みたいに
俺に小さく 礼をした


