相変わらずご機嫌な
青戸がキッチンから運んで来た物は
「 … 青戸、おまえさ 」
「 な、なによ 」
こちらの顔を見ずに
コタツの上へと皿を並べる
最近聞いていなかった、
炊き上がりを知らせる炊飯器の音が
ぎこちない二人だけの部屋に響いた
「 …仮にも病人に、
料理作りに来たんだろう?
炒め物って選択は、どうなんだそれ 」
「 だっ… だって 」
「 ―― まあ
ミエ張って、
作れもしないマズイ料理作られて
" うまいよ "とか言わされる
拷問喰らうよりはいいけどな 」
かなり作り慣れてる感じの
大きさの揃った野菜を
箸でとって、一口食べてみる
「 … 美味いじゃん 」
「 ち、ちょっと待って!
今、ご飯たけたんだから! 」
顔を真っ赤にさせて
だけど口調は つっけんどん
―― 数日前のバレンタインにも
後ろからいきなり突き飛ばされて
校門へと走り去る、
真っ赤な顔の青戸が見えた
ポケットには、チョコレート
多分こいつも
料理を作る時にみただろう
教室や職員室で、
別の生徒達にもらった物と一緒に
手付かずのそれが、
冷蔵庫へ一緒に入っている
「 … 青戸 」


