そんな芸者顔負けの美人のリリー。

聖国の女は褒め合う時に、

『リリー隊長に似て美人ですわねぇ』

とか言って褒め合う程だ。

母さん何て、

『この前リリー隊長に似てるって言われちゃったよ。』

とか言って上機嫌で帰って来た。

話が逸れたが、其れくらいリリー隊長は綺麗な人だ。
金色の髪に白い肌。
碧色の宝石の様な瞳を中心とした端正な顔立ち。

鎧のせいで厳つい感じがするが、本当は小柄な若い只の女なんだけどな……
誰も解ってやれてない。

「有難うリリー。 此から聖宿祭を始めます。」

か細い声で桃色の短髪の少女は言った。
紫水晶色のきらきらのドレスには、所々に宝石が鏤められている。
パーティー用の白い長手袋を嵌めている。

繊細な硝子細工で出来たロータスピンクの硝子の靴。
何をそこまでやるかな……
灰姫の様に王子に迎えに来てもらうわけでもあるまいし。

「彼女は?」

「皇女……ティーナ・エルヴァータ。

俺とお前より二つ上だから……十七だな。」

「あの女は好かねえな。」

こいつとは滅多に意見が合わねえが同感だ。
俺もあの皇女は好きじゃない。
大人しそうな雰囲気を漂わせてるが、リリー何かとは較べ物にならない曲者に違いない。

目で解るんだ。
彼奴の亜麻色の大きな瞳の奥は深く濁ってる。
八歳の時、初めて聖宿祭に出席した日。
十歳の皇女を見た瞬間、背筋に寒気を感じたのを今も忘れない。

「法皇・リオルト様への道を開けろ。」

褐色の貴族服に身を包んだ、赤……いや、紅い目の男が、白銀のマントを高らかと震わせながら人集りの中心を突き進む。

黒にしては少し明るすぎ、ミッドナイトブルー色の髪。

目つきが悪いせいか、一見強面に思われるが、良く見れば整った顔立ちをしている。

「あの男は?」

「アイラ・ウォークス。

真空の魔法弾使い。

リリーと同じく直属の守護隊長だ。」

彼の腰に大事そうに収まっている、拳銃たちは、皆かなり高級な物だな。

「他の警備は?」

「外に兵が五十人。

中はリリーとアイラだけだ。」

ほれ見ろ。
そんな中から法皇を殺して逃げ出すなんて絶対む……

「容易いなギルバート。」