銀鏡神話‐玉響の驟雨‐



アシュリィと呼ばれた女性が、中から銀というには少し冷めた、グレーの髪をたなびかせながら優美に歩いてきた。

透き通った紫水晶の様な瞳の奥でぎらっと瞳孔が開く。

「貴方、まさか此の子があの力を!?」

あの力……

「ええ、彼から放たれる気は間違いなく煌王の放つ、“謳歌の気”(おうかのこころ)……

本物です。」

謳歌の……気?

「謳歌は煌の最強の称号ト、伝えられテいます」

最強の称号、謳歌……

俺の“気”が?

気……

人が放つ其の人のオーラ。
心を気として放つ物。

邪悪な気は悪魔の餌食になりやすいんだ。

逆に綺麗な気は悪魔を祓う力がある。

「どんな気なんだ?」

アイラが口を挟んだ。

やだなー……悪い気だったら軽く、いや、軽いどころかかなりショック。

「澄み切った心の持ち主ですよ。」

本当に?

顔がひきつっているヤヅノに聞いた。

「初代煌王の血をひいている者の気ですよ。」

代わりにアシュリィさんが答えた。

初代の煌王の血を、此の俺が?

「……見せてみなさい。

貴方の謳歌の煌を。」

……やるしかないかな。

「此が私たちの研究結果……

プロテスタント・グローブ。」

ナーウィが俺に差し出してきたのは鋼のグローブ。

中心には黒い球体が。

「ギル……」

アイラが心配そうに俺の顔を見た。

「大丈夫。

アイラ、信じて。」

俺はアイラの手を握り締めた。

アイラは突然吹き出した。

「お前、震えてんじゃねーかよ。」

良かった、やっと笑った。

俺の震えは収まった。

もう絶対、大丈夫。

ナーウィが差し出してきたグローブを俺は取ると、両手に填めた。

其の途端、何だか今までと違う、不思議な感覚に襲われる。

煌の力がはっきりと感じられる。

躰の芯まで流れる透き通った冷たい氷の様な……

「凄いよ、煌の力を感じられる……」

俺の言葉にヤヅノとアシュリィさんは真剣な表情を崩さない。