銀鏡神話‐玉響の驟雨‐

「あのな、俺は昨晩ちょっとばかり飲み過ぎてただけだ。

酔いが取れてりゃ、負けてなかったよ。」

本当かねぇ……

「ほら、いいから早く煌の力を見せろ。

こいつのせいでこんな地底都市に来ちまったんだぜ。

だから案外、もう一度この力を使えば、あっさり帰れっかもしれねー。」

何かさっきからアイラの言う事には納得させられる一方だな……

しょうがない、やってみよう。

「煌の力!!」


シーン


駄目だ……

あの時みたいに手から金色の焔が出ない……

「詠唱は無いのか?」

詠唱……

ああもういい!

適当に……

『煌の王・ギルバートが命じる。

我が手に金色の焔を宿せ。

鎖を断ち切りし神よ、今現れん!』


シーン


相も変わらず何も起こらない……

靜寂しきった荒野の中、アイラの笑い声が響き渡る。

「あはははははは!!

何だよその詠唱は!!」

腹を抱えながらアイラは笑った。

くそっ! しょうがぇだろ!

俺は魔術の知識なんてまるっきり無いし!!

でも、笑うんだな。

何時も公共の場ではしかめっ面で、仮面を被ってるみたいだけど。

こんな人間らしく笑える奴は珍しい。

本当は良い人なんだ。

「はぁ、兎にも角にも、煌の力は思い通りには使えないってわけか。

ま、気長にやってこうぜ。」

アイラはよいしょっと立ち上がると、マントについた砂埃を掃った。

出発するのか。

俺も立ち上がろうとした。

が、足に力が入らない。

恐怖のあまりに立ち竦んだ時とは違う。

何だか俺の足じゃなくなってしまった様な、そんな感覚。