「あぁー、楽しかった!」

 メイド喫茶から出る。

 意外に料理もおいしかったし、かわいいメイドさん達が相手してくれるんだもん。

 男の人がはまるのも、ちょっとわかる気がする。

 「あの…僕…そろそろ…あの…」

 私の一歩後ろで、彼が言う。

 ケータイで時間を確認する。

 もう6時をまわっていた。

 「もうこんな時間かぁ…」

 私も電車の時間があるし、帰らなきゃね…。

 「それじゃっ…」

 「あの!」

 彼が帰ろうとしたのを呼び止める。

 「は、い…?」

 「名前、教えて…?」

 「え…と…」

 私は、彼の言葉を待った。

 「……し、白谷…和…」

 シロタニ カズ。

 それが、彼の名前。

 「私、五十嵐結菜。よろしくね」

 イガラシ ユナ。

 自己紹介をして、その日は帰った。

 これが、和と私の出会いだった。