「聖を見てたら、もうよくなった」

そう言った僕に、
「――んっ…」

聖は髪をなでただけなのに、ビクッと躰を震わせた。

二重の大きな瞳に映っているのは、僕の顔だった。

長いまつ毛も、目にいっぱい溜めている涙も、みんな結ばれている。

「――春海…」

震える声で、聖が僕の名前を呼んだ。

「――聖…」

彼女に溺れる以外、何にも選択肢がなかった。

今は彼女に愛してることを伝えたかった。

今は彼女にどうしても夢中になりたかった。

とにかく、彼女に溺れる。