春海と出会う前の記憶はない。

いや、存在しないと言った方が正しいかも知れない。

とにかく、私にはそんな記憶はない。


「――はっ…!」

また目が覚めた。

「――夢か…」

夢であったことにホッと胸をなで下ろして、頬に手を当てた。

ベタリと、頬は汗ばんでいた。

凍りついてしまいそうなくらいの真冬の夜のはずなのに、躰はまるで真夏のように汗だくだ。

原因は、夢のせいだ。

最近、何故か見るようになった夢のせいである。