あの日、一ノ瀬を追いかけることができなかった。

それは大人になった今でも後悔し続けていることで。

今だ一ノ瀬を忘れられない俺は、彼女というものを作ったことがなかった。

こんなことになるなら、振られる覚悟で告白でもしておけばよかった。

そうしたら、あんなに泣きそうな笑顔なんてさせなかったのに。

今日は休日。

俺は、あれから泥棒を止め、普通の会社に就職した。

驚いたのは、俺が抜けた後、本当に組織が警察に捕まったこと。

俺だけ捕まらないのもどうかと思ったけど、一ノ瀬の優しさを無駄にすることだけはしたくなくて、止めた。

一人暮らしの俺は、何となくテレビを付けた。

「本日のニュースです」

淡々と話すアナウンサーがテレビに映しだされる。

ニュースかよ…

がっかりした俺は、番組を変えようと再びリモコンに手を伸ばした。