適当に飲み物を注文し、運ばれてきたアイスコーヒーをストローでかき混ぜる。

猫舌だから、ホットは嫌いだ。

「…それで?何が聞きたいの?全部、答える」

私の言葉にピクリと肩を揺らした江川朔夜は、ゆっくりと顔を上げた。

凄く、真剣な目。

私は誰かとこんな風にしっかり向き合ったことがあっただろうか。

「…どこに、行くつもりだった?」

やがて、震える声がすいている喫茶店に響いた。

私は、愛する人を不安にすることしかできないらしい。

「駅に4時、迎えがくるの。…名前も顔も知らない婚約者が」

明日は私の16歳の誕生日。

まったくの他人と私は結婚する。

愛なんて欠片もない、結婚。

「…相手は、大手企業の後継者。私の親…といっても血は繋がってないけど、その親はそこそこ大きな会社の社長。大体、想像がつくでしょう?」

「…一ノ瀬は、誰の子供なんだよ?養子にされたってことだろ…?」

まだ、説明不足か。

まぁ、これでわかるほど、簡単なことじゃないけれど。