「あ!一ノ瀬さんと江川くん!今、文化祭の役割決めてるから、席着いて!」

教室に戻ると学級委員の女の子がちょうどよかったと私と江川朔夜に声をかけた。

こっそりついてきたつもりの江川朔夜はぎくり、と肩を揺らす。

…バレバレだって。

「一ノ瀬さんは何やりたい?」

メイド喫茶をやるらしいこのクラスは異常なテンション。

…特に、男が。

「接客以外にしてもらえる?」

「えー?一ノ瀬さんメイド服似合いそうなのに!」

「そういうの、苦手で。裏方なら何でもいいから」

残念そうに見てくる学級委員の視線に気づかないフリをして、机に突っ伏した。

確か文化祭は2週間後。

私がいなくなる日だ。

「じゃあ一ノ瀬さんは調理班、江川くんはレジ係で!」

その声と同時に授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。