雪が降る。
歓声を上げる女性が一人。
隣に寝転ぶ男性を揺すって窓に白い人差し指を伸ばした。
彼は大きなあくびをひとつして、大きく腕を天井に伸ばした。
そして外に目を向けて少ししかめっつら。
僕は寒いの嫌いなんだよ、って言ってコタツに深く潜り込んだ。
彼女は布団からはみ出る黒髪を見ながら膨れる。
その黒髪をぐしゃぐしゃにしながら彼女は不満を言う。
綺麗なのに、珍しいのに。
僕の地元じゃそんなことはないんだよ。
雪かきだって大変なんだから。
肩を揺する彼女に彼は眠そうに答えた。
私にとっては珍しいの!都会に雪なんて滅多に降らないのよ?
丸まってないで一緒に見ようよ?
やだよ〜一緒にここで寝ちゃおうよ?
ぐいっと肩に置いていた右腕を引っ張られて彼女の頭は彼の胸に乗っかった。
彼は左腕を彼女の肩に、右手で彼女の茶色い頭を撫でて、満面の笑顔。
彼女は自分の心臓の音と彼の心臓の音を聞いた。
ずっとコタツの中にいた彼のカーディガンはポカポカ。
彼女は頬を綻ばせた。
さすがに、このまんまじゃキツイかな。
そう言って彼は彼女をぎゅっと抱きしめて、寝返りをした。
ちょっと!寝るつもりでしょ!?
彼女は口調は怒っているけれど、表情はふわふわ。
いいでしょ?
せっかくだから腕枕してあげる。
彼女の頭をぐいっと引き寄せて自分の肩に乗せた彼はその髪に顔をうずめた。
ぽんぽんとあやすその手に誘われるように彼女は目を閉じた。
二人して、微笑んでいる。





ぱちりと、瞼が開いた。
左手が緩く柔らかく握られていた。
空いている右手で茶色い髪をくしゃっと握って、彼女は体を起こした。
外はもう真っ暗。
だけれど、反射した光がひらひら、雪がまだ降っていた。
隣にはコタツに深く入って寝息をたてる彼。
緩く弧を描く唇を見て、彼女も表情を緩ませた。
おやすみ。
彼の頭を右手と体で包み込んで、目を閉じた。





日の光が差し込む部屋の中。
彼女と彼の上には温かい毛布があって。
毛布ごと彼女を包む彼の腕があった。



end.