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それは突然だった。
あまりにも突然で私は私を見失った。
「終わったぁ〜」
洗濯干しが終わって、後は寝るだけ。
今日は楽しい夢が見れそうだと思っていた時だった。
ドダドダと階段を駆け下りる豪快な足音が聞こえたかと思うと、バンっとリビングのドアが開いた。
そこにいたのは、何故か私服姿で私に見せたことのないような、とびっきりの笑顔をしていて、
まだ少し濡れた髪のお兄ちゃん。
そしてお兄ちゃんは確かに言ったんだ。
「ちょっと、出かけてくるから。
ちゃんと戸締りしておけよ」
「ちょっ……ちょっと!」
それだけ言うとお兄ちゃんは玄関へと駆け出し、この家から出て行った。
「……彼女だ」
とっさに思いついたのは彼女の元。
だけど、後にそれは確信に変わる。
部屋を駆け抜ける香水の香りが教えてくれた。
滅多に香水なんてつけないお兄ちゃんのおしゃれ。


