汚レ唄




── 午後 11時40分 ──




『ガチャン』


玄関の扉が閉まる音が聞こえた。



お兄ちゃんが帰ってきた音。




いつものようにリビングには顔を出さずにトントントンと音をたてて2階へと上がる。


そのまま、パジャマ持って一階に降りてお風呂に直行するはず。



いつもと同じ。



なのに、

「今日、父さんと母さんいないんだよな??」


珍しくリビングに顔を出したお兄ちゃん。





ダメだ。



やっぱり、その自分中心なアナタにグッと胸が引き寄せられる。


時折感じる優しさに愛しさを感じる。



 好き

 大好き

 諦められないよ……





「……そう。いないよ。
明日の夕方には帰ってくると思う」

「そっか。晩飯は?お前食べた?」

「カレー。私はとっくに食べたよ。さすがにこんな時間まで待ってらんないし(笑)
お風呂も溜めてあるし入ってきたら?」

「ふ〜ん。
お前にしちゃ気が利くじゃん。入ってこよっと♪」



そういうと、お兄ちゃんはドカドカとリビングから姿を消した。



はぁ〜〜。
緊張する。


胸に手をやると、かなりドキドキしてる。