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しばらくして、緊張もとけ、歌いまくっていた時、隣に座っていた祐君が何かを思い出したかのように「あっ!」と大声を出した。
「どうしたの?」
ちょうど歌っている時だったからマイクを通して彼に訊ねると、彼は大声を出したことに照れてか、俯いて
「陽菜ちゃんの歌聴いてたら、誰かの声に似てるなって思ってたんだ。で、誰だろうってずっと考えてたんだけど、今わかって、思わず声出しちゃった」
と恥ずかしそうに笑った。
その瞬間、ドクリと心臓の奥がざわつき始める。
彼の言葉に少し嫌な予感がした。
『誰かの声に似ている』
前にある人に同じ事を言われたのだ。
お願い、あの人と同じことを言わないで。
私とあの人が交わした言葉を取らないで。
「TSUBASAだよ。あの、歌姫の!言われたことない?」
だけど、そんな私の願いは神様に受け入れてはもらえず、彼は、私の大事にしていた言葉の記憶を塗り替えた。
「……前に1度だけ言われたことある」
大好きな人に……1度だけ。


