汚レ唄



遠くで玄関の扉の閉まる音がする。

お父さんが帰ってきたのかもしれない。





力が入らなくて、立ち上がることもできない。






墜ちていく……。






遠くに聞こえるメールの着信。


手当たり次第にカバンの中を探す。



誰かに助けてほしかった。


この世界から引き上げてほしかった。








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『from:お母さん
 件名:無題
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 内容:陸の買ってきたケーキ食べよう♪

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私は……



この血を恨む。




私に流れる、この血が大嫌い。




これがなかったら……



女としてみてくれたかもしれないのに。





できることなら


今すぐに血を抜いてしまいたい。




1滴残らず、流して



全く関係のない血をいれたい。






『好きになって』とは言わない。



だけど、


『好きになるかもしれない対象』になりたい。






可能性がほしい。



アナタが見てくれる可能性が少しでもあったら




強くなれるから。



頑張れるから。