《コンコン》




この、少し遅いノックの音も、私にはわかる。




あなたのクセさえも私は敏感に反応してしまう。




涙を袖で拭い、なんでもなかったように
「はい?」
と返事をする。





ドアをガチャっと開けるのはアナタで、開けた途端笑顔のアナタが見えると、やっぱり好きなんだと思い知らされる。




「陽菜?これ、彼女の恵」


お兄ちゃんの後ろに小さい影。


さっき見た後姿と一致する。






「ちょっと~?コレって誰のこと?」


彼女はそう言いながら兄を押し退け、私の目の前に来る。





可愛い人。

笑顔が可愛い。

小さくて、華やかで優しげで。



私とは違う人。








「はじめまして、松田恵です。よろしくね、陽菜ちゃん」


「あっはい。
…よろしくお願いします」

「かっわい~!!陸のいう通りの子」

「え?」



お兄ちゃん、私のことどういってんの??

私のこと、どう想ってるのかアナタは知ってるの??




「いいから。
ほら、部屋もどんぞ」

「はいはい。またね、陽菜ちゃん♪」

「………っあ…」



返事をする間もなく締められる扉。



だめだ。あの人良い人そうじゃん。