あの部屋に入れるのは家族の特権だと思ってた。

なのに、今は彼女があの部屋にいる。






「あ~そうなんだ」

必死に言葉を探すけど、何て言ったら一番“私らしい”のかわからない。




お兄ちゃんはキッチンへ行くとコーヒーを用意し、ケーキをお皿に乗せ、また2階へと上がっていった。




彼女が家に来た途端、そんなに変わるんだ。




私の知らないお兄ちゃんの一面。






彼女は知ってるんだ。



私の知らないお兄ちゃんを知ってるんだ。






羨ましい。




羨ましい。


だけど、今、私の中にはそれよりももっと黒くてモヤモヤとした感情が渦巻いてる。






なんで?

なんで私じゃないの??




なんでその顔を私の前では見せてくれないの??




現実を受け入れる。




そのつもりだった。





だけど、受け入れることはそんなに簡単なものじゃなかった。