汚レ唄



圧倒された私達に拓斗くんが声をかけた。


「だめだ」

だけど、それは敵意むき出しで、思わずフォローをいれたくなる。



「なんで?そんなにすぐ決めなくても」

「ヘラヘラしてる奴なんか、俺のバンドにはいらねぇ」

だけど則彦くんは笑顔を崩さない。



「これは、第一印象が大事だからニコニコしてただけなんですって。
まずは僕の音楽、聴いてくださいよ。それから入っていいか決めてください」


自分でこう言うってことは相当腕がいいってことなんじゃない?

拓斗君を見ると、こちらと同じ意見のようだった。



「ちっ。聴くだけ聴いてやる。
こっちは貴重な練習時間が削られるんだから、それなりに納得するようなもん聴かせねーと許さねーからな」



その言葉を聞いて則彦君はにっこりと微笑んだ。


「もちろんですよ。
自分で言うのもアレなんですけど、きっとみなさん驚くと思いますよ」




すごい自信だ。



「でも僕だけ弾くのもなんか変な気がするなぁ~」

「なら俺もやる」

「静?」



今まで静かにことの成り行きを見守ってきた静さんだ。

静さんは腰に刺したスティックを握るとドラムセットに近付いた。



「ドラムとベースはリズムの要だからな」

「静!つーか、その前にバンドに入るかどうか言えよ!」

「話はコイツと俺のセッションをした後だ」


「なんだよそれ!」



拓斗君の声はドラムの音でかき消されてしまった。