「で、お前、なんなの?」
少し、イラッとした様子でギターを置いてから拓斗くんが則彦くんの前に出た。
「いや~、だから、廊下歩いてたらすごい迫力ある音楽が聞こえてきたから聴いてたんですよ。
見てください。
鳥肌たっちゃいました」
腕をまくるがそれらしきものは見当たらない。
「あれ~?話してるうちに消えちゃったのかも。
本当に鳥肌たってたんですよ?で、すごく感動したからご挨拶をと思ったのと、自分の売り込みに……」
「は?」
「まずは僕のことを話しますね?なんかすごく警戒されてるみたいだし。
僕の名前は則彦。専攻はベースです。んで、1年生。趣味は音楽。特技はベース。バイトはカラオケの店員。そこまではOKですか?」
「は、はぁ」
なんていうか、私たちはすっかり則彦君のペースに巻き込まれていた。
「で、そんな僕なんですが、まぁ気の合う方たちとバンドを組むことになったのが1週間前の出来事なんです。
で、今日がそのバンドの初練習、初音合わせの日だったわけですが、僕のやりたかった音
楽とはなんか違うっていうか。
僕だけ違うっていうか……僕以外みんな女の子で、ガールズバンド目指してたみたいなんすけど、どうもベースがいなくて僕、誘われたみたいなんすよ。
で、音合わせしてみたら、これまたどうも生ッちょろいアイドル風目指してるみたいで、どうも僕とは合わなくて、
あっ!僕、ロックっぽいというかカッコいいのがやりたかくて。
そうこうしてるうちに4対1でケンカになっちゃって、僕は脱退って感じになってたんですけど、その帰り道の廊下で、……ほら、防音っていってもちょっと音漏れるでしょ?
で、帰り道、聞こえてきたんですよ。
僕の理想形の音楽。力強い声、激しいギター!!これこそ求めてたものだぁって思ったので思わず開けちゃいました。
で、思うんですけど、多分ベースを入れるともっと厚みがでていい感じにしあがると思うんですよねぇ。
僕とかどうですか?入れてみません?」
コチラが話す隙を与えないほどペラペラと廻る舌。
凄い。


