最初は小さく。
1小節ごとに強弱をつけて。
私の声に合わせて拓斗くんのギターが小さくなる。
そして、サビの部分。
ここで声の音量を上げる。
何ていってるか分からない歌詞だけど、大きく声を出せば、拓斗くんも分かっていたようにサビの部分で音を上げる。
それが2人ちょうどいい音量で、なんていうか、声とギターの音がうまく絡まりあってる。
心をこめて。
激しい感情を歌に乗せて。
歌い終わって、静さんを見た。
腕を組んで壁にもたれかかるその姿はなんだかとても審査されているようで怖い。
静さんがなにか言おうとしたとき、ドアが開いた。
「わぁ~!すっごいですね!僕、なんだか感動しました!」
と手を叩いて入ってきたその男の子はなんだか凄く可愛らしい男の子だった。
「……えっ、と」
「あ~、僕、則彦っていいます。1年生です。あなたたちは……1年生ですか?」
と則彦と名乗る男の子は静さん、拓斗くん、私と流れるように顔を見た。
「え~っと……」
拓斗くんが何か言いかけたとき、またしても則彦くんが口を挟む。
「なんか見覚えある気がするから1年生なんでしょうね」
と自己完結させた。


