そっか。
なんか急に静さんと話やすくなったのは静さんが私のことを少し認めてくれたからなのか。
だから楽しかったんだ。
きっとちょっとずつだけどわかってもらえたらそれでいいよね。
女でも歌えるって分かってくれたら、もっと仲良くなれるんだろうな。
「おっ、ここだ」
扉に302と書かれた部屋だ。
中を開けると木目の床。白の天井と壁。
綺麗で清潔感溢れるスタジオって感じだ。
ドラムにキーボードにアンプにマイクに……多分必要なもの全て揃ってる。
「防音だし、音出し放題だし、いいよなぁ~。気兼ねなく弾けるのって」
「わ、私、初めて入った」
「俺もだよ。静もだろ?」
「ん……」
と静さんは頷くとカバンを端に置いてドラムセットに向かっていった。
腰にスティックを挿している。
「あいつ、内心すげーワクワクしてると思う」
拓斗くんが静さんを指差して小声で話しかけてきた。
「結構無表情貫いてるけど、ほらっ!なんかソワソワしてるし」
そういえば、動きが多い。
静さんはなんていうか、無駄な動きはしない感じだけど、今はあっちにいったりこっちにいったりウロウロしている。
「多分、本当にもう1歩だと思うんだよな。
あと一押しあれば静をバンドに入れられると思うんだ。だから、今日!俺たちの演奏を聞かせて、静を入れさせようぜ!」


