「あの!先に行きますね」
ジュースがかかってるし。
「……あぁ」
と背後で小さな声を聞いてまた走り出した。
2階に着いたときには足がパンパンで息も切れている。
歌を歌おうと思えば、体力勝負なところも勿論あるし、今日から腹筋、腕立てをした方がいいかもしれない。
1階に着くと、まだ、少しの人が並んでいるだけだった
そこに拓斗くんの姿はなく、1番後ろへ並ぶ。
よかった。これでおごらなくて済む。
と、ほっと息をついたところで横に静さんがやってきた。
「お前、なかなか早いんだな」
「……ていうか静さんは歩いてたじゃないですか」
「あれでも急いでたほうなんだけどな」
「え?」
「気持ちは走ってた」
……あれ?静さんってなんか。イメージと違うっていうか、こういう人?
なんか怖そうなイメージあったんだけど、ちょっと面白い人かも。
「気持ちで走っていても歩いてましたよ」
「……廊下は走っちゃいけないって言われてたからな」
「確かにそうですけど」
楽しいかも。
クスクス笑うと静さんの目も優しく三日月のように細められる。


