汚レ唄



「麻緋?」

黙っていたからか心配そうな顔で覗き込んでくる。

急に目の前に蒼の顔が出てきたからか、好きだと意識してたからか顔が熱くなるのを感じた。


「どした?顔赤いけど?」

「やっ、別に!こ、これは、多分、その~」



「熱?」

蒼の大きな手が額を包み込んだ。

少し、硬くて、骨がしっかりしてて、男の人の手だ。


「少し熱いかな?」

「だ、大丈夫」


蒼が少しだけ離れてくれれば……。


「もう少しで家だけど、歩ける?おんぶする?」

「歩けるし!熱もないから!!」

「そう?」





くそ~。

優しすぎる。



だから、そういうところに惚れるんだっていうのに、私なんかに優しくしないでよ。

許されない想いがドンドン膨らんでしまうから。

有り得ないのに、期待しちゃうから。


だからどうせなら冷たくしてくれればいいのに。

それでも、きっと、それはそれで惚れるんだろうなぁ。