汚レ唄




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「じゃあ、またなぁ」


ブンブン手を振る拓斗くんに手を振り返して消えていく背中をずっと見ていた。



「あの人、小さいのに強い人だな」

「しかも本人、多分無自覚だよ?」

「なんか……人を惹きつける魅力がある」

「それも本人無自覚だね」




「惚れた?」

「……えぇ?!まさか!!」



蒼を見るけど、コチラを見ようともしない。

私が好きなのは蒼だよ!って勢いで言ってしまいたいけれど、言っていいことと悪いことの区別くらいつく。




「……私は本当に音楽が好きなんだよ」

「……うん」

帰るかと蒼は呟くと、ゆっくりと歩き出した。



その背中は大きくて手を伸ばせば届く距離で、だから伸ばしたくなる。


後ろからぎゅ~って抱きつきたい。

……そんなことをすれば蒼はどうするんだろう。



やっぱり困った顔するんだろうなぁ。


姉が弟に抱きつくなんて。